「ユビュ親父の再生」は1896年にパリのラ・メゾン
・ドレーヴル劇場で初演されたアルフレッド・ジャリ
(1873-1907)の戯曲「ユビュ王」に由来する。
ジャリの生んだ"ユビュ"は、破天荒な怪物でありながら、
同時に特定できない「タダノヒト」でもあるという不思議
な存在である。
王を殺し、裁判官を殺し、金のために無差別に人を殺す、
かと思うとわが身を
守るためにいくらでも臆病で、卑劣にもなれる。
「ユビュ王」はどこにもない場所で、どのように演出する
ことも、どのように読み取ることも自由な限定されない
戯曲である。
そのためにさまざまな演出で、常に新しい劇として今も
上演され続けている。
画商アンブロワーズ・ヴォラール(1867-1939)もこの怪物
に魅せられ、ユビュを政治家たちの悪徳の象徴としてと
らえて、政界のカリカチュア「ユビュ親父の再生」を書
き、ルオーに挿絵を依頼した。
ヴォラールの依頼を受け、ルオーは、6年の歳月をかけ
て22点の銅版画と104点の木版画で、独自のユビュ
の世界を創りあげた。
その世界はルオーの他の作品にみられるような自己の内
面から湧きでる精神性をもった表現となっている。
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