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島田三郎40年間暮らしたフランス・パリのセーヌ河沿いや郊外の森や畑、ノルマンディー地方の港町オンフ ルールの海辺などをモチーフに、その場の光や風 を、キャンバスに油彩でとじ込める。 絵を描き始めたのは、墨田区でオフセット印刷 の版を起こす職人として働いていた20歳の頃。 決められた作業の繰り返しが窮屈で、「溜まった 鬱憤を絵にぶつけていました」。 昼休みは近所で風景スケッチ。残業して帰宅後 午前3時までドローイング。一眠りして朝6時に職 場へ、という生活を続けていると、「25歳のとき 栄養失調で全身がむくんで、体を壊しちゃった。 食べる暇も惜しんで描いていたんです」。 それからは、絵描き一本で生計を立てていくこ とを決意。1971年、27歳で渡仏すると、手当たり 次第、画廊に作品を持ち込んだ。 「実績がなくても、オーナーが作品を気に入れば 置いてくれる。私のように、まっすぐ飛び込んで いくタイプには合っていましたね」 現地のコンクールでグランプリを受賞し、個展 の依頼も次々と舞い込んだ。2年の滞在予定が、気 付くとすっかりパリに軸足を置いていた。 「描くことに没頭すると、目が冴えてきて絵に異 常性が出てくる。きれいで説明っぽい作品より、 そういう作品の方が、意外と惹かれる人は多い」 1943、東京都八王子市生まれ。体力があるうち に母国へ戻ろうと、70歳を前に2012年帰国。妻で 画家の今井幸子さんの強い希望もあり、軽井沢を 次の拠点に決めた。 「洗練された街に、多様な人が暮らしていて、大 人の付き合いができそう、というイメージ通りで したね」 軽井沢の家には、2人それぞれのアトリエがある。 2階まで貫く高い天井、広々とした白い部屋に、自 然光がたっぷり降り注ぐ。 「描く環境は大事で、作品にも表れるんです。軽 井沢の建築士にパリのアトリエを見てもらって、 『同じように作ってほしい』とお願いしました」 湿度の違いにはなかなか慣れず、「乾く前に色 を重ねて、ぼやっと滲んでしまうことがある」と 試行錯誤を繰り返している。何百枚と描いた浅間 山も「自分のものにするにはまだまだ。個性をも っと出さないと」。 島田三郎年譜 1943 東京八王子市に生まれる 高橋治男氏に師事 墨東洋画研究所に学ぶ サロン・アンデパンダン会員 元一線美術会会員 1971 渡仏、以降パリ在住 パリ・グランショミエール エコール・ド・ギャルソンで学ぶ 2012 帰国 軽井沢に居を構える 第27回ドーヴィル絵画国際大賞グランプリ及び 風景画部門第一位受賞 サロン・アール・フォルム・クルール銀賞受賞 サロン・アンテルナショナル・パリ・シュド銅賞受賞 フランス画壇において非常に高い評価を獲得 日本でも東京、大阪など各地で個展 詩情豊かな風景画は、その香り高い色彩感覚と 相まって、独特の作風を確立している |