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名嘉睦稔(1953- )

1953 沖縄県伊是名島に生まれる

1983 宜野湾市民会館レリーフ「がじゅまる」制作

1995 伊是名村「尚円王 金丸」ブロンズ像制作
   伊是名村仲田港ターミナル胸板壁画制作

1996 読谷村憲法条文モニュメント「萌芽」制作
   個展「沖縄発ー21世紀 原始の力」
   (東京 プティミュゼ美術館)

1997 ブロンズ像「人魚」制作(沖縄 ホテルムーンビーチ)
   「地球温暖化防止京都会議」記念切手の為の原画制作
   (郵政省)
   「Less CO2キャンペーン」ポスターの為の原画制作
   (環境庁)

1998 「地球環境と美の祭典」(東京 伊勢丹美術館)

1999 沖縄郵政創業125周年記念ふるさと切手のための原
   画制作(郵政省)
   「地球環境と美の祭典」(福岡 太宰府天満宮)

2000 個展「名嘉睦稔の世界」(東京 明治神宮)
   「九州・沖縄サミット広報用絵葉書」の原画制作
   (外務省)
   「The World of Bokunen Naka」
   (ニューヨーク Avram Gallery)

2001 「さきよだ展」(東京スパイラルガーデン)
   ドキュメンタリー映画「地球交響曲第四番」に出演
   (龍村仁 監督)
   「日本文化デザイン賞」受賞
   (第24回日本文化デザイン会議)

2002 「名嘉睦稔展〜沖縄の風を彫る〜」
   (東大阪市民美術センター)
   「万象連鎖展」東京スパイラルガーデン)
   「名嘉睦稔〜大自然の伝言を彫る〜」出版
   (サンマーク出版)

2003 絵本『紅逢黒逢の刻』出版(マガジンハウス)

2004 『海のふた』出版(よしもとばなな:文/名嘉睦稔:画)
   「名嘉睦稔木版画展〜風のエナジー〜」
   (愛媛 タオル美術館ASAKURA)
   「名嘉睦稔の世界展大自然の伝言を彫る」
   (沖縄 浦添市美術館)

2006 平成18年度中学校用教科書「美術」に作品が掲載される

2007 沖縄県浦添市てだこホール緞帳の原画制作
   「国際サンゴ礁年2008」ポスターの原画制作(環境省)
   文化庁文化交流使に任命される

2008 個展「命の森」(東京 明治神宮文化館)
   個展「無限の庭」(京都 思文閣美術館)

2010 名嘉睦稔美術館を、北谷町美浜のAKARA内に開館
   画文集『風のゆくえ』発刊

2011 個展『風の島から』(奄美 田中一村記念美術館)
   NHKBSプレミア「たけしアートビート」に出演

2012 第34回「琉球新報活動賞」受賞

2013 地球温暖化防止とサンゴ礁保全に関する国際会議
   ポスターに作品起用(環境省)
   個展『太陽の花 星の花』

2014 「名嘉睦稔・白豊中 二人展」(台湾 TAI-HWA GALLERY)

2015 第49回沖縄タイムス芸術選賞版画部門大賞受賞
   平成27年度「小学校図画工作3・4下」教科書に掲載される
   伊是名村「尚円像乗馬像」ブロンズ像制作(沖縄)

2016 中学校教科書「美術 1」に作品が掲載される
   (平成28年度から使用)
   個展「名嘉睦稔の世界展~風の伝言を彫る」
   (大阪東大阪市民美術センター)
   個展「名嘉睦稔木版画展 太陽の島から」
   (石川 しいのき迎賓館)
   個展「名嘉睦稔木版画展~風の伝言を彫る」
   (徳島 徳島県あわぎんホール)

名嘉睦稔の作風は、作品全体を素材がうねり踊るように配置し
熱帯の色を大胆にちりばめるという奔放さにその特徴がある。
これは制作時に作家が独特の「気分」を自らに乗せていくこと
で作品が生み出されるというものだ。この「気分」は私淑する
棟方志功の作風に影響を受けており、版画を彫るスピードと一
気呵成に塗り上げる裏手彩色法にその証左を見ることができる。
この手法は制作論や思想とも関わりがあり、作家や作品を語る
上で重要である。

制作論で言えば、名嘉睦稔は最初からテーマをもって作品に取
り組むことはほとんどない。名嘉睦稔の頭のなかには「順序」
があり、例えれば自動販売機のなかにある缶ビールが順序よく
出て来るというのに似ている。目の前に出て来る作品を仕上げ
ないうちに、後方に待ち構えている作品に手をつけるわけには
いかないのである。それでは、なぜ作品には順序があるのか。
それは名嘉睦稔自身も判然としないという。名嘉睦稔にすれば
作品自体は描かれぬ前からすでに存在しており、制作は降りて
くるそれを受け止めるに過ぎないからである。

名嘉睦稔は自然対象物の素材を描くのに、実際にそのものを見
たり写真を参考にしたりするということがほとんどない。これ
は上述のように降りて来るものを形にすることに起因している。
そうであれば描かれた自然対象物に多少の不正確さが出て来る
こともあり得るわけである。ところが作品のモチーフがいった
ん降りてきて、それが逃げてしまわないうちにもの凄いスピー
ドで作品を彫った結果というのは、まずもって自然形態におけ
る色や形の精確さに裏打ちされており、これはこれまでの即興
制作でも証明されている。

例えば、「大礁円環」という縦182cm×横1,092cm(版木12枚か
ら成る)の大作があるが、これは海中のパノラマを描いたもの
である。この作品は2週間ほどで一気呵成に仕上げられたもの
であるが、1 枚の版木から次の版木に移る制作の繋ぎ目は、ボク
ネン自身の勘をたよりに彫り続けられた驚異的な作品である。
ちなみに、これを観た海洋学者は魚や海の状態が精確に描かれ
てことに驚嘆した。魚や海草、岩などの形や色が海底から掘り
出されたように瑞々しく描かれていたのである。

これを映画監督の龍村仁(「地球交響曲」製作)は、名嘉睦稔
の驚異的なパフォーマンスは脳の記録というより人間が太古よ
りもともともっていた「身体性の記憶」だと語り、現代の文明
社会に生きる人間たちのなかでは消滅しかかっている能力だと
いみじくも指摘した。

名嘉睦稔は自然界の「生きものたち」に人間が及ばないことを
力説するところからも自前の思想を引き出す。例えば「人間は
義理や恥を覚えて、獣や生物と同丈同等になる」。という「義理恥
(ジリハジ=沖縄方言)」の思想だ。「人間は生きものたちと
違って野生の自己責任から免れており、社会に保障されている
以上、道徳、秩序や法律など社会の維持のための義務を果たさ
ねばならない」という言説は、もし、人間がそれができないな
らば「人間は自らの命を自らの責任で請け負い生きている生き
ものたちには及ばない」と結論づける。

「板画」の代表作
「大礁円環」
「節季慈風」
「緑門シリーズ」
「星の花」
「万象連鎖シリーズ」
「真南風の向日葵畠」
「湧卵」
「部瀬名岬」
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